お初天神裏参道(以下:ウラサン)とは、60年の歴史を持つお初天神商店街の脇道にある飲食店街。2015年3月に12店舗がオープンしました。ウラサン一帯は私有地なので、お店の外で飲める「道呑み」が名物。ウラサンのテーマとして掲げている「毎日が縁日」を再現した空間となっています。
「お初天神裏参道」と前田高志率いる「前田デザイン室」がコラボレーションすることになったのが、2018年秋のこと。
これまでになかった新しい試みである、飲食店とオンラインサロンのコラボは、2019年8月3日の夏祭りでフィナーレを迎えます。
そこで、お初天神裏参道担当 吉本草彦と前田デザイン室代表 前田高志が、コラボレーションに至るきっかけから、ウラサンプロジェクトのフィナーレまでの軌跡を振り返ります。
お二人の出会いについて。吉本さんが、前田さんのブログを見て声をかけたことがはじまりだと聞きました。デザイナーを探していたのでしょうか?
仕事の一環として、「お初天神裏参道」で毎日エゴサーチをしています。Twitter、インスタグラム、WEBサイト全てです。発見したら「いいね」を押して回っています。どんな人が来てくれて、どんな風に感じたのかを客観的に知りたくて。
そんな感じで画像検索していたら、ある日ウラサンのお店の一つ「鉄燻CHOI」の看板画像が出てきました。クリックしたら前田さんのブログにたどり着いたんです。 「こんな風に書いてくれる人がいるんだなぁ。」と思ったと同時に前田さんのことを初めて知りました。
「お初天神裏参道」を認識して、燻製のお店鉄燻CHOIに行ったのでしょうか?
いや、認識してないですね。この頃マイブームだった燻製のお店に行きたかったんです。インターネットで検索して、鉄燻CHOIを知りお初天神裏参道に行き着いた。鉄燻CHOIは、ロゴがまず素晴らしい。もちろん味も美味しいし、雰囲気もいいんです。ウラサン全体のお店がいいなと感じました。
その頃僕はフリーランスになって、ブログでの発信に力を入れていたんです。デザインのことを書くブログで、毎回しっかりと仕事の話を書くのもしんどいから、鉄燻CHOIのロゴがいいなと感じたことを雑記的に書くのもありかなと。それが2016年の6月で、このウラサンプロジェクトに繋がるのだから、発信ってすごいよね。
そうですよね。ただその時は前田さんのことを知ったというだけで、それから1年くらい後ぐらいかな。僕の弟が、新長田でまちづくりの会社に勤めていて、兵庫県伊丹市の資料を持って帰ってきました。その流れで再び前田さんのブログ記事にたどり着いたんです。前田さんは、伊丹市のご出身・在住ですよね。伊丹を盛り上げたいという趣旨の記事で、その中でもお初天神裏参道のことを書いてくれていたんです。
裏伊丹は、完全に裏参道から着想を得ているからね(笑)。「裏参道」ってネーミングも含めて、ウラサンの取り組みが素晴らしいと思っていたから、裏伊丹の記事の中でも書きました。
それを見て「連絡するなら今だな」と。FBのメッセージで突撃アタックしました。最初は「裏伊丹プロジェクトで何か手伝えることがあるかもしれないです」みたいなことを書いたような気がします。
あれ…?メッセージくれたのは、吉本くんのお父さんじゃなかったっけ?
いえ、あれは僕です!あれ(笑)?
そうか(笑)。吉本くんのお父さんからもFB投稿に「いいね」してくれていたから、勘違いしてたかもしれない。
ウラサンに関する話題は、代表取締役社長である父に逐一報告しています。すると父はすぐ確認してその投稿に「いいね」しにいってるようです(笑)。だからかもしれないですね。
前田さんにメッセージをしたところ「数日後(ウラサンのお店)かき鐵に行く」とのことだったので、その時会うことになりました。
3月上旬、「牡蠣会&デザインの話しましょう」 in 大阪
— 前田高志/アートディレクター (@DESIGN_NASU) February 17, 2018
あと2~3名募集。初めましての方大歓迎。#NASU pic.twitter.com/bHtCsOWKR3
そうそう。Twitterで募集して僕の会社NASUで、牡蠣を食べる会を開いたんですよ。一昨年の2月ですね。牡蠣会には、のちに前田デザイン室メンバーになってくれた人も数名来てくれ、その会が始まる前に吉本くんに挨拶しました。それが初めての出会いです。
ただ僕は、お父さんが来ると思ってたんですよ。「お初天神裏参道の代表」って聞いていたから、勝手なイメージだけどなんとなく。
そしたら若者が現れて「激若やん!」と思いました(笑)。それが第一印象。
僕の前田さんの第一印象は「大きいし、がっしりしてる!」ですかね(笑)。前田さんの発信が繊細だったから、小柄なイメージを勝手に抱いていました。
2018年の出会いから「前田デザイン室とコラボしよう」に到るまでの経緯を振り返りたいです。
それから前田さんと何度か食事に行ってるんですよ。ただすぐにウラサンプロジェクトがどうこうって話にはならなかったはずです。
何度目かの食事の時かな、その時は電通の日下さんと一緒で「街づくりのポスターを作る」みたいな話をしていました。その企画は電通社員がポスターを作る、報酬はいらないけど好きなように提案できる取り組みだったんですよ。
その話を聞いて「前田デザイン室も同じようなことをやっていいですか?」って日下さんに聞いたと思います。それで実際には前田デザイン室とのコラボが実現したって感じかな。
吉本さんにお伺いします。オンラインサロンと組むことに不安はありませんでしたか?
なかったですよ。ウラサンの現場は、僕が一人で動いている部分が大きいんです。それに大阪駅前のルクアやグランフロントとは、お金も規模も違います。そんな中で、広告代理店に入ってもらっても差別化にならない気がしていて。
とはいえ、結局は人で選んでいたのかもしれない。前田さんとだったら面白いことができる気がしたんです。だから仮に前田さんが広告代理店に勤めていたら、結果的に広告代理店にお願いしていたことになっていたかもしれないです。
あ、でも前田デザイン室にお願いしたい理由もちゃんとあります。
飲食と全く関係ない人が作るものを見たかったからです。その方が面白い化学反応…いや、突然変異が生まれるくらいの面白さになりそうだなと。
美味しそうな料理の写真やデザインって、みんな見慣れている気がするんです。飲食をやってる人のデザインではなく、デザインをやっている人が考える飲食を見てみたくてお願いしました。
そうだよね。「今までと違う考え方で」って聞いた。ウラサンって、すでに人気があったし、集客で困っているわけではない。吉本くんが何を望んでいるか聞いたところ「ウラサンに来た人たちに楽しんでもらいたい」と。
それですぐに思いついて提案したのは「うんこの料理作りませんか?」だった気がする。でも飲食だから、うんこは流石にだめって言われたかな(笑)。
うんこはちょっと…(笑)。
でも飲食店の発想じゃないからいいかなと(笑)。
あとこの段階で、ゲームの話もしてたと思う。「楽しんでもらう」の部分とゲームに通ずるところがあるよねって。
そうですね。幼い頃ゲームさせてもらえる時間が限られていたので、ゲームをできない時間は攻略本をずーっと読んでいました。だから「裏参道に来た時だけじゃなく、帰ってからも読みたくなるようなパンフレットを作ってもらえませんか?」って話をしましたね。
そうそう。ウラサンで唯一場所が明かされていない秘密のバーがあるんだけど、そこのコンセプトもファイナルファンタジーの隠し部屋がモチーフだと聞いた。だからゲームとの相性が絶対いいなと。
その時は雑談レベルで、このあと前田デザイン室においてウラサンプロジェクトが立ち上がりました。ウラサンチームでもコンセプトについてミーティングしていたようで、そこで違う案でいいものが出れば変わってもいいと思っていましたが、結果ゲームをテーマにしたもので進めてくれていますね。「ウラサンで遊べ」ってコンセプトもミーティングを進めていくなかで決まりました。
思えば最初の段階で前田さんとブレストしていたことって、かなり実現してもらっていますね。ウラサン団のキャラクターは、料理の擬人化をしてくれているし、うちわもパンフレットも作ってもらった。ガチャガチャも設置されますからね。